岩手春紀行②|古湯のぬくもりと海辺の夜明かり──盛岡から宮古へ

2025年9月4日

1. 鉛温泉 藤三旅館──足元から湧く湯に包まれて

福田パンでの昼食を終え、午後は車を走らせ花巻方面へ。雪をまとった山々に囲まれた谷に入ると、そこに「鉛温泉 藤三旅館」がありました。創業600年ともいわれる歴史を誇るこの宿は、木造の建物が川沿いに連なり、雪景色と調和してまるで時が止まったかのような趣を見せています。

今回立ち寄った目的は日帰り入浴。館内に入ると、木の香りと湯けむりが混じり合う独特の空気が迎えてくれました。名物の「白猿の湯」は、浴槽の底からお湯が直接湧き出す自噴泉。足元からぷくぷくと湧き立つお湯に包まれる感覚は他にはなく、源泉の力強さを肌で実感しました。

窓の外には雪が降り積もり、川面を覆う白が静けさを際立たせています。湯に浸かりながら聞こえてくるのは、かすかな川のせせらぎと雪の落ちる音だけ。体は熱く、顔に触れる空気は冷たい。その対比が心地よく、時間を忘れてしまうほどでした。

湯上りには休憩所で地元の人々と談笑する機会もあり、「冬はここで体を温めないと乗り切れない」という言葉が印象的でした。旅人にとっては特別な体験も、地元の人にとっては生活の一部。そんな文化に触れられるのも、温泉を訪れる醍醐味のひとつです。

2. 駒形神社──雪に包まれた参道を進む

鉛温泉を後にし、次に向かったのは花巻市の「駒形神社」。岩手山を御神体とする由緒ある神社で、この季節は雪に覆われた静かな境内が広がっていました。

鳥居をくぐり、雪に覆われた参道を歩くと、靴の下から「ぎゅっ、ぎゅっ」と雪を踏む音が響きます。両脇に並ぶ杉木立は雪化粧をまとい、冬ならではの厳かな雰囲気を漂わせていました。社殿の前に立つと、澄みきった冷気が心身を引き締め、自然と深く一礼をしました。

この神社は古来より馬の神様として信仰され、かつては南部藩の武士たちも参拝したと伝えられています。静まり返った境内で手を合わせると、歴史の重みと自然の力強さが重なり合い、自分自身も背筋が伸びる思いでした。

雪の神社は華やかさこそありませんが、そこに漂う静謐さは他では味わえないもの。旅の途中に立ち寄るだけでも心が整い、「また訪れたい」と素直に思える時間でした。

3. 浄土ヶ浜パークホテルへ──海辺の夜を迎える

夕暮れが迫る頃、車は宮古市へ。海岸線に沿って進むと、日本の渚百選にも選ばれた「浄土ヶ浜」が見えてきました。目指す宿はその高台に建つ「浄土ヶ浜パークホテル」。海を見下ろすロケーションで、冬の旅を締めくくるのにふさわしい場所です。

ロビーに入ると、大きな窓の向こうに広がるのは三陸の海。夕闇に包まれる海面は鈍い銀色に光り、波の音がかすかに響いてきます。チェックインを済ませ、案内された客室の窓からは、浄土ヶ浜の白い岩肌が暗がりの中に浮かび上がって見えました。

夕食は三陸の幸をふんだんに使った会席料理。特に印象に残ったのは、宮古名物の新鮮な海鮮。刺身はどれも身が引き締まり、甘みが際立っていました。冬の海で育まれた魚は格別で、地元ならではの贅沢を実感しました。温かい鍋料理も身体を芯から温めてくれ、この日の行程を締めくくるにふさわしいごちそうでした。

食後には展望大浴場へ。大きな窓からは夜の海が一望でき、月明かりが波間に反射して揺れていました。露天風呂に浸かると、潮風と湯けむりが交わり、昼間の疲れがすっと消えていくようでした。

4. 夜の余韻

部屋に戻り、窓の外を眺めながらこの一日を振り返りました。桜の名所から温泉、神社、そして海辺の宿へ。移動距離は長かったものの、その分、岩手の自然と歴史と文化を濃厚に味わえた一日でした。

特に心に残ったのは、鉛温泉での「足元湧出泉」の体験と、浄土ヶ浜パークホテルから望む海の眺め。どちらも「ここでしか味わえない」体験であり、旅の記憶を鮮やかに彩ってくれました。


まとめ(1日目後半)

学んだこと:岩手の冬は厳しいが、その厳しさが温泉や食事、風景をより特別なものにしている。

良かった点:鉛温泉の独特な湯、雪に包まれた駒形神社の静けさ、浄土ヶ浜パークホテルの眺望と料理。

困った点:冬の移動は道が滑りやすく、時間に余裕を持たないと不安になる。

旅行記

Posted by deaymytrip