岩手春紀行③|海と桜と食をめぐる二日目──三陸の静けさと賑わいの中で

2025年9月4日

1. 浄土ヶ浜の朝

旅の二日目は、宮古市の象徴ともいえる浄土ヶ浜から始まりました。宿泊した浄土ヶ浜パークホテルを出ると、冷たい潮風が頬を打ち、冬の海らしい凛とした空気が体を包みます。遊歩道を歩くと、白い石英安山岩の岩肌が海に突き出し、波に洗われながら鋭い輪郭を見せていました。その光景は、まるで極楽浄土を思わせることから「浄土ヶ浜」と呼ばれるようになったと伝えられています。

冬の海は荒々しさと静けさを併せ持っています。波が打ち寄せる音は力強いのに、不思議と心が落ち着く。岩と岩の間を白波が駆け抜け、飛沫が冷たい風に乗って頬に届きました。朝日が昇るにつれ、海面は銀色から青へと変わり、その移ろいが一日の始まりを鮮やかに彩ります。

2. 浄土ヶ浜遊覧船に揺られて

続いて、港から浄土ヶ浜遊覧船に乗船しました。船体はしっかりとした造りですが、外に出ると冬の海風は鋭く、コートの上からでも冷たさが突き刺さります。しかし、その寒さを超える迫力の景観が待っていました。

船はゆっくりと沖へ進み、浄土ヶ浜の奇岩を海側から望むことができます。陸から見るのとはまったく違う角度で、白い岩肌が連なり、まるで屏風のように海を囲んでいました。波しぶきが船体を打ち、甲板に立つ足元に水滴が散るたびに、自然の力を強烈に感じます。

途中、船員の案内で海鳥たちに餌を投げる体験もありました。カモメやウミネコが器用に飛び回り、見事にパン屑をキャッチしていく姿は愛嬌たっぷり。観光船ならではの小さな触れ合いが、寒さの中に温かさを添えてくれました。

3. 唐丹町本郷の桜並木

船を降り、車で南下して唐丹町へ。目的は「唐丹町本郷の桜並木」でした。北上展勝地の桜も有名ですが、ここは地元に愛される静かな桜の名所です。道路沿いに続く桜のトンネルはまだ五分咲きでしたが、枝先に淡い色が重なり合い、春の訪れを感じさせてくれます。

並木道を歩いていると、地元の方が散歩していて「もうすぐ満開ですよ」と声をかけてくれました。観光地ほどの賑わいはありませんが、その分、日常の延長にある桜を味わうことができます。満開の時期には一面が桜色に染まり、まるで夢のような光景になるのだろうと想像すると、また来年も訪れたくなりました。

雪国の厳しい冬を越えて咲く桜には、特別な強さがあります。冷たい空気の中で花弁を揺らす姿を見ていると、人もまた自然と共に生き、力を蓄えて春を迎えているのだと感じました。

4. 三陸の恵み、うに丼の昼食

昼食には待望の「うに丼」をいただきました。三陸沿岸はウニの産地として知られ、冬場でも新鮮なものが提供されます。丼に盛られたウニは黄金色に輝き、まるで宝石を散りばめたよう。

一口食べると、濃厚な甘みと磯の香りが口いっぱいに広がります。舌の上でとろける食感は格別で、ご飯との相性も抜群。醤油を軽くたらすと旨味がさらに際立ち、箸が止まらなくなります。これこそ旅先でしか味わえない贅沢であり、長距離を移動してきた甲斐があると心から思いました。

店内には漁師らしき方々も食事をしており、彼らの日常と同じ料理を口にしているのだと思うと、不思議な一体感が生まれました。観光客向けではなく、地元に根ざした味だからこそ、記憶に深く刻まれる一皿でした。

5. 南三陸さんさん商店街で締めくくり

旅の最後に訪れたのは「南三陸さんさん商店街」。震災からの復興のシンボルとして建てられた商業施設で、木の温もりを感じる建物が並び、地元の人と観光客が行き交っています。

商店街を歩くと、新鮮な魚介を扱う店や、手作りの土産物を売る店が軒を連ね、活気に満ちていました。店主と会話を交わすと「遠くから来てくれてありがとう」と笑顔で迎えてくれ、その言葉に胸が温かくなります。

震災を乗り越えて再び賑わいを取り戻したこの場所には、単なる買い物以上の意味がありました。店に立つ人々の表情には力強さと誇りが宿り、その姿を目に焼き付けながら、旅の締めくくりにふさわしい時間を過ごしました。

6. 二日目を振り返って

この日の行程を通して強く感じたのは「自然と人の営みの共生」です。浄土ヶ浜や遊覧船で目にした荒々しい海の姿。唐丹町で出会った桜並木の静けさ。漁師の手から届けられる濃厚なうに丼。そして復興の力を象徴する商店街。それぞれは異なる場面ですが、すべてに共通して「自然とともに生きる人々の姿」が刻まれていました。

旅の終わりに立ち寄った商店街の賑わいを背に、岩手で過ごした二日間を思い返しました。厳しい冬と荒波に耐え、春を迎えて花を咲かせる自然。その中で暮らしを営む人々の強さと優しさ。そうしたすべてが、この旅をかけがえのないものにしてくれました。


まとめ(2日目)

学んだこと:自然の厳しさと恵み、その両方を受け止めて暮らす人々の力が、この土地の魅力を何倍にもしている。

良かった点:浄土ヶ浜の荘厳な風景、遊覧船での迫力ある体験、静かな桜並木の美しさ、三陸の新鮮なうに丼、復興の象徴である商店街の温かさ。

困った点:冬の海は風が強く、遊覧船では防寒具が必須。

旅行記

Posted by deaymytrip